坊さんブログ、水茎の跡。

小さな寺院の住職です。お寺の日常や仏教エッセーを書いてます。普濟寺(普済寺/栃木県さくら市)住職。

お寺の十一面観音 ~ 箒川ですすり泣き、横たわっていた仏さま ~


午後にかけて雨が強まってきました。
さくら市には洪水警報が出されています。

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お寺のお庭にも雨が打ち付けています。
明日は二十四節気の穀雨。
雨が必要な時期ではありますが、大雨による川の増水などには警戒しなければなりませんね。

川といえば、お寺には川から拾われてきたという伝説を持つ十一面観音をお祀りしています。

お姿はこちらです。

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立像の十一面観音菩薩さまです。

 

【十一面観世音】じゅういちめん‐かんぜおん
七観音または六観音の一つ。十一の小面(菩薩面、忿怒面、笑面など)をつけた観音で、救済の働きが多面的であることを象徴する。本面を加えて十一面とするものと、本面以外に十一面あるものとあり、十一面のつけ方も種々である。二臂、四臂、八臂などの像形にあらわされる。六道に配した場合には、阿修羅道(あしゅらどう)の救主とされる。十一面観音。

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十一面観世音〈奈良県 法華寺〉

『日本国語大辞典』「十一面観世音」の項


この十一面観音さまには、不思議な伝説があります。

江戸時代のお話。お寺の近くに住む村人が、箒川(栃木県の那須野が原を流れる那珂川水系の川)のあたりを歩いていると、川沿いの竹藪からすすり泣くような声が聞こえてきました。近づいてみると、観音さまが横たっていたので、村人は驚き、すぐさま抱きかかえて村にお連れしたのでした。

以来、この十一面観音さまは、地域の方によって大切に守られてきました。ただ、高齢化により守ることが難しくなり、数年前にこれまで供養を続けてきた普濟寺に寄進していただきました。


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斜めからの表情も美しいですね。お顔と胸に金色が残っています。全体的に黒ずんでいるのは、お線香の煙によるものでしょうか。

修復した際でしょうが、仏像と厨子が固定されたこともあり、詳しい製作年などは分かりません。持ち上げてみると、それ程重みを感じないので、おそらく寄木造と思われます。

仏像の専門家の方に写真を見ていただいたところ、「童形風で、おそらく鎌倉仏風に作ったものではないか」「あるいは古像を、江戸時代に大幅に手を加えている可能性もある」とのコメントをいただきました。またいずれ、じっくりと鑑定していただける日が来ればと願っております。

十一面観音さまには、災難消除や病気治癒、延命などの御利益があるとされています。

これまで多くの苦難をお救いくださってきた観音様。

「この度の疫病が早く収束して平穏な日常が戻りますように」と、一心に手を合わせます。

オン・ロケイジンバラ・キリク・ソワカ


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