ホトトギスの花が咲いています。
お地蔵様も秋の虫の音を楽しまれているようです。
さて私事の事後報告で恐縮ですが、昨年、博士(日本文学)の学位を取得することができました。
タイトルは『中世密教文学の研究』というものです。
有り難いことに祝賀会もしていただきました。お教えを受けた先生方や同じ研究者の皆さまに心から感謝しています。
平成3年(1991)に大学に入学して、平成30年(2018)に取得できました。
平成という時代の、ほぼ全てを費やしたことになります。
これまで発表したものから選び出す形でまとめました。総ページ数は、400字詰め原稿用紙で1800枚ほどになりました。
全文は、大学の機関リポジトリで公開されています(本文はサイズが大きいです)。
学位の取得を、ずっと応援してくれていた亡き父に報告できなかったのは心残りです。
いつの日か、内容を組み替えたり、だいぶカットする形でも、出版させていただく機会に恵まれればと思っています。推敲を継続しているところです。
目次は以下です。
『中世密教文学の研究』
緒言
第一章 西行の和歌観と真言密教文化圏
一 西行の和歌観と覚鑁の一密成仏思想
二 西行周辺の僧侶―如寂『高野山往生伝』をめぐって―
三 僧房で語られる怪異と西行の娘
まとめ
第二章 頼瑜の文学的研究
第一節 頼瑜『真俗雑記問答鈔』諸本について
『真俗雑記問答鈔』諸本概略
第二節 頼瑜の文学
一 歌書目録―上覚『和歌色葉』との関連から―
二 和歌―〈一心〉の境地―
三 歌学―「声」の系譜―
四 言談―説話との重なり―
五 夢想―夢が果たした役割―
まとめ
第三章 根来寺と文学―聖教の広がり―
第一節 中央寺院での展開
一 覚鑁『孝養集』の享受 ―智積院新文庫蔵本を中心に―
二 頼豪『束草集』の「小亭記」をめぐって
三 智積院所蔵の文学関連史料について
第二節 地方寺院での展開
一 『真俗雑記問答鈔』と鹿児島坊津一乗院
二 坊津一乗院における〈中央〉と〈地方〉
付・東京大学史料編纂所蔵『一乗院諸記』翻刻
まとめ
第四章 真言僧侶の修学と文学
第一節 『連々令稽古双紙以下之事』
一 幼童の稽古をめぐって
付・東京大学史料編纂所蔵『連々令稽古双紙以下之事』翻刻と影印
二 『連々令稽古双紙以下之事』筆録者考
第二節 講式
一 講式の書体と場
二 智積院新文庫所蔵の講式
三 二尊信仰の一齣
付・上野学園大学日本音楽史研究所蔵『二尊講略式』翻刻
まとめ
第五章 真言密教文芸
第一節 口決と文学
一 「雑談」から「口決」へ
付・薬師寺蔵『醍醐寺真俗雑談記』翻刻
二 「物語」と「口決」の接点
付・国立国会図書館蔵『宥快法印御物語之事』翻刻
第二節 和歌と密教
一 身と心の歌
二 随心院蔵『〔中臣祐殖家集断簡〕』
付・『秘奥集』『阿弥陀決定往生秘印』紙背翻刻
第三節 お伽草子・説話と唱導
一 お伽草子『幻夢物語』の展開―
付・随心院蔵『源夢物語』翻刻
二 『可笑記』と『宝物集』―唱導との関連から―
付・智積院新文庫蔵『〔根来説草集〕』翻刻
第四節 紀行文
一 『成田紀行』をめぐって
付・成田山仏教図書館蔵『成田紀行』翻刻
二 参詣と和歌
三 室町末期醍醐寺僧の巡礼記 ―厳助『高野参詣路次中日記』をめぐって―
まとめ
第六章 密教と文学
一 僧と財とのあわい―無住を手がかりとして―
二 法語と文学―『沙石集』の法語的側面―
三 密教文学―信仰曼荼羅―
まとめ
結語
初出一覧
3年前に住職を拝命してからは、近隣のお寺さんや檀家さんとの関係を一から勉強しています。文学の研究と、大学での講義と、お寺の檀務との結びつきを考えることが、今後の課題と感じています。
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最後までお読みくださりありがとうございました。