坊さんブログ、水茎の跡。

小さなお寺の住職です。お寺の日常や仏教エッセーを書いてます。

萩之坊乗円筆「鴨長明絵像」(石川丈山歌賛)について

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お中日を過ぎて、秋のお彼岸も後半に入ってきました。

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彼岸花


彼岸花も、キレイに咲いています。
お地蔵様も微笑んでいますね。

さて、今回もお寺に伝わる掛け軸を紹介したいと思います。

中世隠者の一人、鴨長明(1155~1216)の絵像です。

鴨長明
かもの-ちょうめい
1155?−1216
平安後期-鎌倉時代の歌人。
久寿2年?生まれ。父は京都下鴨神社の神職。琵琶や和歌にすぐれ,後鳥羽上皇の和歌所寄人にとりたてられる。元久元年下鴨河合社の禰宜に推されたが,一族の反対で実現せず出家。大原へ隠棲後,日野に方1丈の庵をむすぶ。「千載和歌集」に1首,「新古今和歌集」に10首はいる。建保4年閏6月8日死去。62歳?通称は菊大夫。法名は蓮胤。著作に「方丈記」「発心集」「無名抄」。
【格言など】ゆく河の流れは絶えずして,しかも,もとの水にあらず(「方丈記」)
『日本人名大辞典』「鴨長明」の項

 

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鴨長明絵像

※この度、修復いたしました。写真は修復前のものです。

絵を描いたのは、寛永三筆にかぞえられる松花堂昭乗(1584~1639)の弟子にあたる萩之坊乗円(1612~1675)です(ちなみに、松花堂昭乗は「松花堂弁当」の由来と言われる方です)。

絵を描いた萩之坊乗円は、男山八幡の松花堂昭乗から書画とともに密教を学んだ真言僧侶です。

京都男山から智積院に入り、3人の能化様(第5世隆長(1586~1656)、第6世宥貞(1592~1664)、第7世運敞(1614~1693)のもとで密教を学びました。

真言宗御室派別格本山の五智山蓮花寺を再興した後、六波羅蜜寺の12世にまで昇り詰めています。

仏教と文芸の双方に精通していた方です。

 

松花堂昭乗
しょうかどう-しょうじょう
1584−1639
江戸時代前期の僧,書家。
天正12年生まれ。京都石清水八幡宮滝本坊の住職。書は松花堂流,滝本流とよばれる。本阿弥光悦,近衛信尹とならんで寛永三筆のひとり。画,茶もよくし,水墨画に「葡萄に鶏図」がある。寛永16年9月18日死去。56歳。堺(大阪府)出身。俗名は中沼式部。別号に惺々翁。
『日本人名大辞典』「松花堂昭乗」の項

乗円
じょうえん
1628−1673

江戸時代前期の僧。
寛永5年生まれ。真言宗。摂津大坂の人。松花堂昭乗に師事。京都の蓮華寺を再興し,のち六波羅蜜寺の住持となる。また昭乗に書画もまなび,世に知られた。寛文13年5月21日死去。46歳。俗姓は岡本。字は朗然。号は玄々。

『日本人名大辞典』「乗円(2)」の項


絵の上の方には、石川丈山(1583~1673)による長明の和歌「石川やせみの小河の清けれは月もなかれを尋てそすむ」が書き加えられています。

また、掛け軸が収められている箱には「由緒書」(紙葉2紙)が収められ、石川丈山の和歌にまつわる逸話や、掛け軸の表具(一文字・風帯)に『醒睡笑』の作者でもある安楽庵策伝(1554~1642)好みによる名物裂(安楽庵裂)が用いられているなどの情報が記されています。

 

石川丈山
いしかわ-じょうざん
1583−1672

江戸時代前期の漢詩人。
天正(てんしょう)11年10月生まれ。徳川家康の近習を辞し,藤原惺窩(せいか)に師事する。寛永12年(1635)から京都にすみ,詩仙堂をたてて隠遁(いんとん)。書にすぐれ,茶人としても知られた。寛文12年5月23日死去。90歳。三河(愛知県)出身。名は重之,凹。通称は嘉右衛門。号は四明山人など。著作に「新編覆醤(ふしょう)集」「北山紀聞」など。
【格言など】無益の事は負けて居申すべき事(武士の弟子にあたえた訓戒)

『日本人名大辞典』「石川丈山」の項

安楽庵策伝
あんらくあん-さくでん
1554−1642

織豊-江戸時代前期の僧。
天文23年生まれ。浄土宗。京都禅林寺で智空に師事,慶長18年京都誓願寺55世。板倉重宗のすすめで笑話集「醒睡笑」をまとめ,落語の祖といわれる。寛永19年1月8日死去。89歳。美濃(岐阜県)出身。法名は日快。別号に醒翁。

『日本人名大辞典』「安楽庵策伝」の項



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文人風

文人風のお姿です。
左前から描かれる構図は、金沢文庫所蔵の「兼好像」と似ているでしょうか。

鴨長明の絵像としては、教科書などでも広く知られる伝土佐広周筆「鴨長明法師画像」(神宮文庫蔵)をはじめ、梨木祐為写「蓮胤法師鴨長明像」(下鴨神社蔵)や、伝松花堂昭乗筆「鴨長明像」(個人蔵)など数点が伝わっています。

この普濟寺所蔵「鴨長明絵像」の描かれ方は、僧侶姿で琵琶を携える姿でもなく、文人風のたたずまいです。製作年代がほぼ特定できる本絵像は、当時の文人たちの理想像を伝えるものとしても貴重なものと思われます。

末永く守り伝えていきたいと思います。

なお、詳細については「萩之坊乗円筆「鴨長明絵像」(石川丈山歌賛)について」(『唱導文学研究』第12集、三弥井書店、令和元年度刊行予定)に書かせていただきました。いずれ、ご覧いただけましたら幸いです。

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最後までお読みくださりありがとうございました。





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