坊さんブログ、水茎の跡。

小さなお寺の住職です。お寺の日常や仏教エッセーを書いてます。

金沢文庫へ

金沢文庫での研究会に参加してきました。
金沢文庫は横浜市にある日本最古の武家文庫です。

www.planet.pref.kanagawa.jp
2016年(平成28年)8月には、金沢文庫が管理している総計2万点余りにおよぶ「称名寺聖教・金沢文庫文書」が国宝に指定されました。

この国宝史料の中に、「千字文説草」と呼ばれる説草群があります。およそ170点におよぶ鎌倉後期の写本です。

 
表紙の右上に、千字文の一字が記されています。「金」の他にも、「天」「玄」「宇」「洪」「丁」「日」「公」「成」「陰」「六」などの文字があって、内容ごとに分類されています。

この「千字文説草」を読む研究会に、2014年(平成26年)から参加させていただいています。昨年の12月には、中間報告として「《シンポジウム》称名寺の千字文説草を考える」が開催されました。

bukkyoubun.jp


当日は、千字文説草に見られる、称名寺3世の湛睿(たんえい・1271~1347)の推敲の跡などについて報告させていただきました。

「千字文説草」を含む「称名寺聖教・金沢文庫文書」は、文学研究はもちろんのこと、歴史・美術などあらゆる分野の学問に寄与するものです。今後の研究によって、中世東国における法会の実態の解明にもつながるでしょう。

調査では、こうした貴重な史料を目の当たりにして毎回感動しています。研究者の仲間と出会えたことも私の財産です。

調査の合間に、特別展 「いろいろとりどり ~国宝に見る「色」」を拝観しました。

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いろいろとりどり

最終日ということもあって、学生さんから年配の方までにぎわっていました。

会場内は、白・赤・黄・青・黒などの色に満ちあふれていて、仏さまの世界に包まれているような気持ちになりました。

そういえば、仏教の「六色仏旗」もカラフルです。

www.jbf.ne.jp


『小部経典』というお経から色が選ばれたとか。それぞれの色には意味も決まっています。仏教の教えと色は、切り離せないんですね。

次回の特別展「浄土宗七祖聖冏(しょうげい)と関東浄土教」も楽しみです。

金沢文庫の入り口から見えるトンネルを撮ってみました。

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中世の隧道

称名寺境内へと通じるトンネルの隣にある、もう一つのトンネル……鎌倉時代に作られた「中世の隧道」です。

現在は通行止めとなっていますが、向こう側から、お経を唱える中世のお坊さんが歩いてきそうな、何百年前にタイムスリップした気になる聖域です。

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最後までお読みくださりありがとうございました。